いちご
「そう…か」
言葉も少なく、瑠衣斗はそう応えると、少し俯いて頭を掻いた。
「…うん」
何だか胸が苦しいが、私は瑠衣斗を見つめるしかできなかった。
はーっ。と大きく息を吐くと、ガバッと瑠衣斗が起き上がり、私をじっと見つめ返してきた。
まさかいきなり目が合うと思っておらず、ドキッと胸が跳ねて反応した。
「行くか」
「…………へ?」
予想外な言葉に、思わず聞き返すと、瑠衣斗が近くまで寄ってきて、いつものように私の鞄を奪い、歩いて行ってしまう。
…………あ、あれ?
立ち止まって見送るしかない私に、瑠衣斗は少し歩いた先で振り返ると、「おいてくぞー」と私に向かって声を出した。
「あ、う、うん!!」
慌てて返事をして瑠衣斗に駆け寄ると、瑠衣斗は横に並んだ私を確認して再び歩き出す。
素直に横に並んで付いて行く私に、いつものように歩幅を合わせ、ゆっくりと歩いてくれた。
慶兄と一緒に居る時とは違う胸の苦しさに、思わず眉をしかめて視線を落として歩いた。
やっぱり、私はるぅが好きなんだ…。