極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 俺たちの冷たい表情に気づかず、彼女は文香の悪口を並べ始めた。

「おとなしそうに見えるけど、男好きで困っているんです。お客さんだけじゃなく、店長にまで色目を使ってるんですよ」

 そう言って彼女は身をかがめた。
 少し離れた場所にいる文香をちらりと見ながら声をひそめる。

「ほら、白石さんはシングルマザーだから、養ってくれそうな男なら見境なく誘惑しようとするんですよ。余裕がないっていうか、切羽詰まっていて見苦しいんですよね」

 その言葉を聞いているうちに、あまりのばかばかしさに思わず笑いが込み上げてきた。
 
 彼女が見境なく男を誘惑するわけがない。
 文香がどれだけ一途で誠実か、俺は誰よりも知っている。
 
 小さく笑い声をあげた俺を見て、彼女は頬を染めた。
 その視線を感じながらゆっくりと目を細める。

「申し訳ないけど、もう黙ってもらえますか? 友人の文香さんを侮辱されるのは、とても不愉快だ」

 低い声と冷ややかな視線に、彼女は驚いたように顔色を変えた。

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