極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
　俺たちのやりとりに気付いた文香が、慌てたように近づいてくる。

「申し訳ありません。せっかく来店していただいたのに、ご不快な思いをさせて……」

　文香はなにも悪くないのに、謝罪の言葉を口にしながらホールスタッフの女性の腕をなだめるようにつかんだ。
　けれど彼女はむきになって声を荒げる。

「そうやって白石さんがいい子ぶったら、私が悪者みたいじゃない！　私は本当のことを言っただけで……！」

　聞くに堪えない言い訳をされ、さらに苛立ちがつのる。


　そのときダンと音がして、テーブルが震えた。
　見ればアランが乱暴に足を組み微笑んでいた。

「仕事くらい真面目に、ね。どこ口がそんなふざけたことを言ってんだよ」

　ホールスタッフの女性は驚いたように目を丸くしてアランを見る。

「仕事もしないで悪口を言ってるだけなら、目障りだから消えてくれる？」
「な……っ」

　容赦ないアランの言葉に、彼女は言葉が出ず肩をわなわなと震わせた。
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