極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 目を見開いて固まる私を見て、結貴は小さく微笑む。

「……ごめん。幸せそうな文香がかわいくて、我慢できなかった」
 
 吐息だけでささやかれ、どうしていいのかわからなくなった。
 心臓がものすごい勢いでドキドキしている。

「あれー? カシャっていわないよー?」

 いつまでもシャッターが下りないカメラに、未来が焦れたようにこちらを振り返った。
 その瞬間『カシャ』とシャッター音がして、思わず三人で顔を見合わせる。

「ごめん、セルフタイマーの設定が長すぎたみたいだ。撮り直していい?」

 結貴は笑いながら立ち上がり、スマホを手に持つ。
 
 
 その様子をなんとか平静を装いながら眺めていた。
 だけど、唇にはまだ彼とのキスの感触が残っていて、鼓動はドキドキとうるさいままだった。
 
 
 どうしよう。
 胸が痛い。
 
 結貴のことが好きすぎて、心臓が壊れてしまいそうだった。
                       

< 144 / 197 >

この作品をシェア

pagetop