極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 ふたりも一気にやめて、お店が回っているのだろうかと心配になる。

「加藤さんも辞めたし店長もクビになったし、もともといたスタッフほとんどいなくなりましたよ」
「どうして」
「店長がずっとお店のお金を横領してて、それが本社にバレたらしいです」
「横領……」
「それじゃなくても、店長って白石さんを贔屓してほかのスタッフの反感煽って、わざと店の雰囲気をぎすぎすさせて働きづらい環境を作っていたんですよね。白石さん、気付いてました?」

 わざわざお店の雰囲気を悪くするなんて。
 どういうつもりなのかさっぱり分からない。

 困惑していると、篠田さんは「白石さん、鈍いなぁ」とあきれ顔をする。

「まんまと店長の思惑にのせられて、今までたくさん陰口言っちゃってごめんなさい」

 ぺこりと頭を下げられ、慌てて首を横に振った。

「そんな、気にしないでください」
「じゃあ謝ったんで、気にしません」

 顔を上げた篠田さんは、もうすっかり笑顔だ。
 さっぱりとした態度に、私もつられて笑顔になる。

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