極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 病室に入ってきた私を見て、祖父は「おや、文香。髪を切って素敵になったね」と微笑む。

「おじいちゃんもサプライズパーティーのこと知ってたの?」
「もちろん知っていたよ。素敵な誕生日になったかい?」

 悪びれることなく微笑む祖父に、ため息をつきながら椅子にこしかけた。

「お誕生日はとっても楽しかったけど」
「けど?」
「結貴と過ごす時間が多くなってから、未来がすこしずつわがままになってきてる気がして」
「それはいいことだね」

 私のつぶやきに、祖父は満足そうにうなずいた。

「いいこと?」
「今までは文香とふたりだけの暮らしで、文香に迷惑をかけないように一生懸命いい子にしてきたんだろう。それが結貴さんに出会って世界が広がった。いろいろな経験をしていくうちに欲張りになっていくのは、ひとつの成長だよ」
「それは、私ひとりじゃ親として不十分だったってことだよね……」

 自分の未熟さを痛感して肩を落とす。

「当たり前だろう。文香は自分が完璧な親だとでも思っていたのかい?」
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