極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 私はそう悟り、歯を食いしばってうなずく。
 目頭が熱くなり、涙が込み上げてきた。

「うん。好きなの。結貴のことが、ずっと前から」
 
 言葉を詰まらせながら言うと、祖父は「ようやく素直になったね」と私の頭をなでてくれた。
 
「お前たちの間にどんな事情があったのかは知らないけれど、離れていても想い合えたふたりなら乗り越えていけると思うよ」
 
 いいのだろうか。
 この想いを彼にぶつけても。
 
 未来が自分の子供だと知ったら、結貴はどう思うだろう。
 そして、彼のお母様は、私たちのことを許してくれるだろうか。
 
 考え出すと不安で、膝の上に置いた手が震えた。
 その手の上に、しわしわの手がそっと重なった。

「葉山さんを信じて、頑張りなさい」

 そう言われ、私は涙をこらえながらうなずいた。
                 
                  

 その週の土曜日。
 私と未来は自宅で一緒にお料理をしていた。
 
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