極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています

「ごめんね。副社長に就任したばかりで仕事も忙しいのに、わざわざ忘れ物を届けさせちゃって」
「以前は研究職や役員は休日関係なく仕事をしていたけど、今はできるだけしっかり休みを取るようになったから、大丈夫だよ」
「働き方改革、ってやつ？」
「そう。製薬会社の社員が仕事に追われて体を壊したら話にならないだろ。とくに研究職は放っておくと何日もラボに泊まり込むから、必要がないときは無理やりにでも休みをとらせるようにしてる」

　思わず「いいなぁ」と本音が漏れる。

　休みは週一日しかなく、夜や日曜にシフトに入れないことで肩身の狭い思いをしている私にとっては、とてもうらやましい。

「文香はどんな仕事をしてるの？」
「ママはね、ウエイトレスさんなの」

　私が口を開く前に、また未来が答えてしまう。

「へぇ、ウエイトレスさんなんだ」
「水色のワンピースに白いエプロンをつけたママ、すごくかわいいんだよ」
「それはぜひ見てみたいね。どこのお店で働いているの？」
「ええと、駅のそばのね……」