極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 私は胸をなでおろしながら、「うん」と首を縦に振る。

「そいつは、未来ちゃんが生まれる前に亡くなったのか?」
「うん……」

 嘘をついている罪悪感に胸を痛めながらうなずくと、結貴がわずかに顔をゆがめる。

「じゃあ、出産して子育てして、ひとりで大変だったな」

 思いやりの滲む声で言われ、ずっと抱えてきた心細さや不安を吐き出してしまいたくなる。
 
 必死に唇を引き結び黙り込んでいると、結貴は手を伸ばしぽんと頭をなでてくれた。
 
 その指の感触を愛おしく感じる。
 付き合っているときも、結貴は私の頭をなでてくれたっけ。
 
 胸が熱くなり、涙が込み上げてくる。
 うるんだ瞳を見られたくなくてうつむくと、髪をなでていた大きな手が後頭部に回り、そのまま引き寄せられた。
 
 とん、と額にたくましい胸がぶつかる。
 驚いて身を固くする私の肩を、結貴が優しく抱いた。

「よかったら、未来ちゃんと文香のことを、俺に支えさせてくれないか?」
「え……?」

 どういう意味だろう。
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