極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています

　未来の提案に私は、きょとんと眼をまたたかせる。

「ママのごはん、とってもおいしいんだよ！」
「へぇ。それはぜひ食べたいな」
「ママ、そうしよ？」
「でも、なんの準備もしていないから、作るなら買い物に行かなきゃいけないし」

　戸惑いながら言うと、結貴は「じゃあ一緒に買い物に行こう」と笑った。

　結貴の車で向かったのは大型のスーパー。
　様々な食材が並ぶ明るい店内を、未来と結貴がカートを押しながら楽しそうに進む。

　店は混み合っていて、たくさんの家族連れが買い物をしていた。
　
　傍から見れば私たちも、幸せな家族のように見えるのかな。
　なんて考えて、慌てて首を横に振る。

「文香」と名前を呼ばれ見上げると、驚くほどそばに結貴の整った顔があった。
　驚きとときめきで頬が熱くなる。

「な、なにっ？」

　動揺まるだしの私を見て、結貴がくすりと笑う。

「車で来てるから、米とか洗剤類とか重いものが必要だったら買っておいたらいいんじゃないかと思って」
「そ、そうだね」