極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 私は深呼吸をして鼓動を落ち着かせながらうなずく。

「お言葉に甘えて洗剤も見ようかな」

 言いながら洗剤や日用品が置いてある売り場へ足を向ける。
 けれど未来はその場に立ち止まったこちらを見ていた。

「未来、どうしたの?」
「足がつかれたの」
「疲れたって、そんなに歩いてないよね?」

 私とふたりでお買い物をするときは車ではなく徒歩だから、今日の何倍もの距離を歩いているのに。

「靴が合わなくて足が痛い?」
「ううん」
「じゃあ、どこか具合が悪い?」
「ううん」

 いつもはこんなこと言ったりしないのに。どうしたんだろう。

「もうあるけない」

 未来は立ち止まったままじっと結貴を見上げていた。

 あ、もしかして……。

「未来ちゃん、抱っこする?」

 察した結貴が言うと、未来はとたんに笑顔になり「うん!」と元気よくうなずいた。

 疲れたなんてただのいい訳で、結貴に甘えたかったようだ。

「それなら、私が抱っこするから……」
「いいよ。未来ちゃんおいで」

< 83 / 197 >

この作品をシェア

pagetop