例えば、こんな始まり方
そんな言葉がもらえるなんて。決戦の朝には思ってもみなかった。

「ありがとうございます、本当に」

「さよなら・・・本当のさよならだね、純」

美沙は目に涙をいっぱいにためていた。

「最後は笑顔で別れよ、純。最後の握手!」

純一に向かって、まっすぐ手を伸ばす美沙。

「ああ」

美沙は、純一の手を愛おしそうにぎゅっと握りしめると、

「幸せになりなさいよ!私も、なるから!!」

と泣き笑いで言った。

「バイバイ、純」

「ああ、元気で」

美沙が去って行った。

「ふぅ~。」

どすん、と椅子に座る純一。

「お疲れさま、純一くん」

「真由こそ・・・頬、痛かったろ?」

「私は、大丈夫」

「これ、出来るだけ早く出すよ。それにしても、美沙に『僕を拾った』話をしたんだね」

「軽くね~♪」

私は、ウィンクした。

「あっ、紗季さんのところに戻らなきゃ。きっと、心配してる」

「そうだね、戻ろ。その前に、このチーズケーキ、食べちゃお。2人とも、口付けてないよ」

「そうだな」

「おいし~。ここのチーズケーキ、「天使のチーズケーキ」って呼ばれてるのよね」

「うちも、がんばらなきゃな」

「がんばれ、シェフ兼パティシエ!!」

「あんま、ちゃんとしたケーキは作ってないけどな」

「まぁまぁ・・・よしっ、紗季姉さんのところに戻ろ!」

「おぅ!」

紗季のところに戻ったら、もう一人、純一にお客が来ていた。

< 34 / 39 >

この作品をシェア

pagetop