例えば、こんな始まり方
「紗季さん、ここでゴハン食べてもいいですか?」

純一が遠慮がちに聞く。

「従業員割引きで40%オフで食べて行っていいわよ」

「僕ら全員?いいんですか?」

「もちろん」

私は、オムライスセットをジンジャーエールで、純一はカルボナーラ・赤ワインセットで、そして悠翔はマルガリータピザ・白ワインセットをオーダーした。

「あれ?真由ちゃん、飲めないの?」

と興味深げな悠翔。

「うん、1口で真っ赤っ赤」

「へぇ~?」

「おいっ!?」

と焦る純一。

「大丈夫、いくら似てても、俺が愛してるのはセーラだけ」

「はいはい」

呆れ顔の純一。

「私も、仲間に入れてよ。私は飲めるくちだから、カシスオレンジで参加するね」

「悠翔さんの婚約者、セーラさんって言うんだけど、彼女、私にそっくりなの」

「へぇ~?・・・ほんとだ、茶髪青目の真由だ」

紗季も、かなりびっくりしている。悠翔が言う。

「あ、紗季さんも式に来てほしいんだけど。10月18日の日曜日は」

「うん、うち、基本的に日曜日休みだから。・・・って言うか、2次会、うちでやる?}

「グッドアイディア!僕も腕をふるうよ」

「え~~~っ?そしたら、私、1人になっちゃうよ」

う~ん、とみんなで考え込み、悠翔が、

「美沙が来るよ、2次会だけ」

「美沙さん、かぁ。平手打ち、くらったんだよね」

「あちゃ~。あいつ、気が強いから」

「でも、悪い人じゃないみたい」

「うん、何せ、俺らの友達だから」

「3人、友達だったの?」

と、これは紗季。

「そう、3人で仲良くなって、そのうち、純と美沙がつきあいだして、くっついたり離れたり、・・・割と長かったよね、お前ら、ゴールインするまで」

聞きたくない、そんな話。そんな私の心を読んだように、純一が

「ごめん・・・その話はなしで。真由、もう過去の話だから、気にしないで」

「うん、分かってる」

純一くんは優しい。でも、それは皆に優しいのだろうか。

「今は真由だけを愛してる」

って言った言葉、信じていいんだよね。

そのままお開きになって、駅に向かう途中、純一は

「ちょっと寄って行くところがあるから、先に帰ってて。そんなに時間、かからないから」

「うん・・・じゃあ」

なんか、くすぶるものがありながら、部屋に帰る。5分ほどたって、純一が帰ってきた。
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