例えば、こんな始まり方
「とりあえず、今日は遅いから、泊まって行っていいわ」

「ありがとう、真由」

いきなり、呼び捨てですかい!でも、ロッキーの姿が思い出され、本気で怒れない私がいる。

「私、着替えるから、バスルームに行ってて。覗かないでよ」

「僕がそんなことをするとでも?了解」

なんなの、なんなの?どうしてこんなことになっちゃったの?私の馬鹿、お人よし!

真由が着替え終えると、純一がうつむいて立っていた。・・・涙?まさかね。

「はいはい、着替え終わったよ。あなたは、着替えは・・・なさそうね」

私は、財布から1万円を取り出す。はぁ・・・われながら、お人よし。

「これで、着替えと・・・明日は出来るだけ早く帰るから、夕食を作っておいて。それくらい、できるでしょ?」

そこには、満面の笑顔をした純一がいた。

「住んでいいの、ここに?本当に?」

「あなたは、ちょっと変わっているけど、悪い人じゃなさそうだから。・・・仕事も、そんなに割のいいのじゃないかもしれないけど、心当たり、当たってあげる」

「真由って・・・いいやつだな。悪い男に騙されるんじゃないぞ!」

ぎゅ~っ!純一は私をきつくハグした。

「それ以上は、ダメだからね!」

「分かってます。真由は僕の命の恩人だ」

「言い過ぎだってっ!もう、あたしは、明日早いから、寝るよ」

「うん、おやすみ」

こうして、私と純一くんの奇妙な同居生活が始まったのだった。




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