堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「お詳しいんですね。建築関係のお仕事を?」
「……一応、建築士でね。今は基本的に日本で仕事をしているが、二十代の頃はここウィーンの、若手ばかりが集まった建築事務所で経験を積んでいたんだ」
なるほど、建築士……。それにしても『二十代の頃は』と言うのだから、今はきっと三十代なんだよね。そんなふうには見えないくらい、爽やかで若々しいのに。
こっそり彼の横顔を観察しながら路上で待機していたタクシーの前まで来ると、運転手に荷物を渡してトランクに積んでもらい、私たちはふたりで後部座席に乗った。
閉め切られた車内で、彼が大人っぽい香りのフレグランスをつけているのに気がつく。
甘くて濃厚だけれど決して不快ではない、ラグジュアリーで気品ある香り。こんなにいい香りのする男の人っているんだ……。
私がそんなことを考えている間に、彼はオーストリアの公用語であるドイツ語をスラスラ使いこなして運転手に行き先を告げていた。
「すごいですね、私なんか英語すら危ういのに」
ついさっき、初対面の彼に放った綻びだらけの英語を思い出し、自分で自分に呆れる。左隣に座る彼も同じシーンを思い浮かべたのか、小さく肩を震わせてクスクス笑った。