堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

 そっと肩を揺すると、「ん……」と苦しげな声を漏らした彼が、目を閉じたままで呟いた。

「許さ、ない……」
「え?」

 今、許さないって言った……? 寝言かもしれないが、不穏なセリフに心がざわついた。

「志門さん……?」
「どうして、そんな嘘……瑠璃……」

 志門さんが途切れ途切れに、悩ましく呟く。彼の肩に触れていた手が思わずビクッと震え、私はその手を自分の胸に抱いた。

〝許さない〟〝嘘〟〝瑠璃〟――志門さんはもしかして、昨夜友里恵さんに会ってあの話を聞いた? その可能性を思いついただけで、どくどくと全身が脈打った。

 仕事で疲れているだけかもしれない。さっきの言葉も、なにか悪い夢を見ていて、ただ寝言が漏れただけかもしれない。そう思い込もうとするのに、不安ばかりがまたむくむくと成長していく。

 こうなったらもう、本人に確かめるしか……。

「起きて、志門さん。お話したいことがあるんです」

 さっきより強めに彼の体を揺すりながら、声を掛ける。するとハッとしたように目を覚ました彼が、くしゃりと髪に手を差し入れながら、私に問う。

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