堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

「寝てしまっていたのか……。今、何時だ?」
「七時を過ぎたところです」
「時間がないな……。とりあえずシャワーを浴びてこないと」

 志門さんはすっくと立ちあがり、大股でリビングを出て行く。私はとっさにその背中を呼び止めた。

「あの!」
「ん? どうしたの、瑠璃」

 振り返った志門さんは、時間がないにもかかわらず、一旦足を止めて私を見つめる。さっきの呟きなど、まるで忘れてしまったみたいに優しい瞳だ。

「昨夜はどちらに?」

 しかし、おそるおそるそう尋ねた瞬間、彼の顔がかすかにこわばった。そして私から視線を逸らし、乾いた声で説明する。

「品川のホテルで会食をした後、取引先の社長に誘われて少し飲んできた。連絡もせず、ごめん」
「いえ……」

 きっと嘘だ。いつも誠実な志門さんだからこそ、嘘をつくのに慣れていないのがすぐわかる。取引先の社長というのは嘘で、友里恵さんと会っていたに違いない。

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