堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

「すみません、タクシー代、あとでお返ししますから」
「いらない。早く元気になって、仕事で返せ」

 つっけんどんな口調で言われ、私は仕方なく頷いて車を降りる。ホント、世良さんや上尾さんのためにも、早く元気にならなきゃ……。

「ありがとうございました。またご連絡します」

 ドアが開いたままのタクシーに向かって頭を下げる。

「ああ。無理はしなくていいが、待ってる」

 世良さんがそう言い残すと、タクシーのドアは閉まり、自宅の前から走り去った。

 家には明かりがついている。母は、平日の昼間は福祉施設で事務をしていて、夕方には帰っているから、今頃夕飯の支度をしている頃だろう。

 しかし私は家には入らず、そのまま住宅街を歩きだした。その足が目指すのは、近所のドラッグストアだ。

 五分ほどで到着した店内で、周囲の目を気にしながら妊娠検査薬のコーナーを探す。

 わかりにくい場所だったが、店員さんに気軽に売り場を尋ねられる商品ではないので、何とか自力で見つけて、適当なものをひとつ選んでレジへ向かった。

 購入した時点で、なんとなく心の平穏は取り戻せた気がしていた。これがあればきっと、妊娠の可能性は否定できる。家に帰ったら検査して、陰性だとわかってホッとしたら少しは食欲も湧くだろうか。

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