堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

「はい。わかりました。ありがとうございます」

 今の時期……というのがなにを指しているのかよくわからなかったが、婚約者と説明してあるのでマリッジブルーのことだろうと解釈し、俺はベッドの傍らで椅子に座ったまま神妙に頭を下げた。

 医師は続けて、瑠璃に向かってアドバイスする。

「神谷さん、どうしてもなにも食べられなくてまたつらくなったら、また点滴受けに来て。私、住谷(すみたに)って言うんだけど、ここの産婦人科にいますから。ご自宅が近いなら、健診や出産もうちで考えてくれたらうれしいわ。じゃ、少ししたら看護師が点滴の様子を見に来ますからね」

 軽くお辞儀をして、住谷医師が部屋を出て行く。俺はその姿が見えなくなっても、彼女の発言に衝撃を受け、ドアの方を見つめたまま固まっていた。

 産婦人科? 出産? ということは、瑠璃の体は今――。

「志門さん」

 長い沈黙の後、ベッドの上で瑠璃が俺を呼んだ。振り向くと、点滴のおかげか幾分顔色のよくなった彼女が俺を見て苦笑した。おそらく顔に動揺がありありと浮かんでいたのだろう。

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