クールイケメン店員からの電話
それにしても、なぜそこまでして羽山が理央に電話をかけてきたのかがサッパリ分からない。
そもそもロクに面識が無いのだ。
あの時、羽山が接客したのは麻衣子にだけだ。麻衣子が羽山と話している間、理央は店内をブラブラと見て回っていた。つまり、あの日は一度も羽山と会話を交わしていない。いや、それどころか、目が合った記憶さえないのだ。
「というか・・・・なんで私に?」
「実はあの時、いいなーって思ったんだよね」
「!!」
(ウ、ウソでしょ!?)
あまりに衝撃的すぎて、絶句してしまった理央に、羽山はサラリと言った。
「だから今度、会えない?」
「・・・・・・・・・・・・」
もはや絶句どころではない。フリーズ状態。
「もしもし? 聞いてる?」
「・・・・・え、あ、はい。 聞いて、ます。 え? なんで私?」
「フッ。だから、いいなって思ったから」
羽山はクスリと笑った後、理央のフリーズした脳まで届くように、ゆっくりと伝えてくれた。
その後もいくらか会話はしたが、結局のところ、理央がパニックから完全に立ち直らないうちに、羽山にうまく丸めこまれるようにして、次に会う約束をしたのだった。