転生したら、モブでした(涙)~死亡フラグを回避するため、薬師になります~
ローデンヴァルト先生は葉野菜をちぎり終えると、魔石を使って火を熾していた。魔石の表面にある呪文を摩って魔法陣が描かれた薄い石版の上に置くと、ボッと音を立てて火が灯る。石版の呪文を摩ることによって、火力が調節できる仕組みらしい。鍋を置く三脚も石版の上にセットされた。

続いて取り出されたのは、ホットサンドメーカーみたいな上下挟み込むタイプのフライパン。

「もしかして、それでパンを焼いて食べるのですか?」

「そうだ」

ホットサンドメーカーがこの世界にあるなんて。まあ、この世界の元となったのは、日本で作られたゲームなのでなんら不思議ではないが。

まずは、ローデンヴァルト先生が見本としてサンドイッチを作る。パンの表面にバターを塗り、チーズ、ベーコン、葉野菜の順番で挟む。黒コショウを振ったあとパンで覆い、フライパンにセットして上下で挟んだ。それを、火にかける。

しだいに、パンが焼ける香ばしい匂いが漂い始めた。食欲が刺激される。

蓋を開くと、パンがこんがり焼けていた。まずは、四等分にして味見をさせてくれるようだ。ナイフを入れると、ザクッといい音が鳴る。ローデンヴァルト先生は目で「食べろ」と指示を出した。ひとつ手に取ると、間に挟んであるチーズがびょーんと伸びた。どこまでも糸を引くので、途中でローデンヴァルト先生がナイフで切ってくれる。フロレンツィアとニコラも手に取った。パクリと頬張って見ると、パンはサクサクで香ばしい。中にあるシャキシャキ感が残った野菜と、とろけるチーズ、それから肉汁溢れるベーコンが、それぞれのおいしさを主張していた。あっという間に、食べてしまう。
< 108 / 245 >

この作品をシェア

pagetop