好きな子を守れなかった代償
「……ッ!ひっく……」

芽吹は航が入ってきたことには気付いていないようで、顔を手で覆って泣いている。その体はガタガタと震えていた。

航は迷う。声をかけるべきか否か。もしも声をかけているところを見られたら、痛い思いをするのは自分だ。しかしーーー。

「だ、大丈夫?」

航は勇気を出して話しかけてみた。一年生の頃は気軽に話しかけられたのに、一年以上話していなかったせいか、まるで大勢の人の前でスピーチする時のように緊張している。

「……寺本くん?」

驚いたように芽吹は顔を上げる。目が合った瞬間、やはり好きなんだと航は自覚した。

「立てる?」

航が手を差し伸べると、芽吹はその手を恐る恐る取ってくれた。初めて触れたその手はとても小さくて、航はこのまま抱きしめたい衝動に駆られる。

「……ごめんね」

芽吹はニコリと航に笑う。その笑顔は映画のことを話していたあの時の顔とは違う。とても儚くて、今にも消えてしまいそうだった。
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