同じ空の下~想い描いた2人の夢~
春馬先輩が歯を悔いしばって悔しそうな顔をしたのを私はまだ知らない。

『ホントは俺がああなるはずだった。樹にカッコいいとこ見せたかった』そんな春馬先輩の本音が私に届いてるはずもなく、私は試合に夢中だった。

「春馬…少し話そうか?」と先生が声をかけている。

先生は自分の話を始め、

「自分の気持ちに後悔ないよう、正直生きろよ」とくくった。

自分の気持ちに正直に…

私の心にもその言葉は深く刺さった。

春馬さんの気持ち…?私は自分のことしか考えて無かったかもしれない。結局、甲子園は自己満足かもしれない。

でも、もう後には引けないし、終われない。甲子園が終わったらちゃんと、もう一回春馬先輩に自分の言葉で気持ち伝えなくちゃ!私はそう決めた。

「あー」というお兄ちゃんの声にビックリして我に返った私…

乃木くんは追い込まれていた。

粘るバッターと乃木くん。乃木くんは負けた。

ヒットになった。でもすでにアウトは2つ取っている。迎えるバッターは…

向こうのエース…

乃木くんは緊張から少し力が入りすぎ、球が甘くなってしまった。

そして見逃さなかったバッターが華麗な音色を響かせ、場外まで飛ばしてきた。

紛れもないホームランだった…

そして一気に三点返されてしまうことになった。そのあとのバッターはきっちり抑えたため、三点ですんだのだけど。

戻ってきた乃木くんは脱け殻のようになっていた。

「…いい試合なってきたな。向こうはピッチャー替えてくるだろうな。乃木、お前はどうする?」と主将が聞いた。

乃木くんは無言と言うより、完全に魂が抜かれているような感じだった。

「乃木くん!」と私は言って顔を覗き込むと

「…えっ?あ、なんか言いました?」って少し震えてるように見えた。

そんな乃木くんを抱き締めたのは春馬先輩で。

「何凹んでるん?そんな暇無いで?試合はまだ終わってへんよ?」と優しく声をかけている。

「…うん…」と乃木くんは言う。

「アホ!たかが三点取られたくらいで何魂抜いとんねん。ええか、これからもっとこんな場面はある。プロでも取られるんやから気にせんでええ!なめるな言うてるやろ?お前はメンタルがなってへん。これからもっとしごいたるから覚悟しとけよ?」と主将は言った。

「そうだよ、ここからしっかり守ればいいんだから!場数足りないんだよ。ほら、経験!終わったら、一緒に練習するから」と私は言って、とりあえず乃木くんを立ち直らせた。

春馬先輩は離れて、「よっし、もう大丈夫やな?しっかり踏ん張ってこい」と言った。

『選手交代のお知らせをします』と案の定、向こうはピッチャーを代えてきた。

「ほら、行くぞぉ~」と主将は声を皆にかけた。そしてバッターボックスに向かった。

ピッチャーはサウスポーのエースだ。

「やっぱりな」ボソッと呟く主将。

そして、何故か右ボックスから左ボックスへとチェンジしていた。

どうやら対策考えてるらしい。

まだリードはある。とりあえず守りきれば、勝てる!追加点が欲しいところではあるが。
< 19 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop