同じ空の下~想い描いた2人の夢~
お兄ちゃんが「自分らしく楽しんでこいよ」と言ってくれた。

うんとは頷いたけど、出番が近づいて来て、バクバクは止まらない。息苦しくなるくらいだ。

「樹ちゃん…。普段通りで良いからね!全部取るし、皆を信じてもっと頼ってね」とキャッチャーが声をかけてくれた。

「はい!」私は少し楽になった。

私はマウンドへ、皆はそれぞれの守備位置に散った。

『やっとお出ましか』と聞こえた気がした。

もしかしたら、『女を引きずり出せ』とでも言われてたのかもしれない。

けど、そんな事、関係ないわ。女だからって見くびらないで欲しい。

1人目、私の初球はストレート…。

スピードは130㎞まずまず出ている。

相手は呆然としていて、振ることは出来なかった。私はそれに少しホッとした。

そこからは私の腕の見せ所だ。

私の2球目はチェンジアップだ。

相手は豪快に空振りした。

この辺りはまだまだ私に言わせれば序の口、ウォーミングアップに過ぎない。

三球目、私は少し球を甘く入れる。

案の定、相手はバットにボールを当ててきた。ヒットになった。

けど、ここまでは私の想定内。思うツボだわ。

二人目、私は勝負してみる。最近練習してきたナックルカーブを使ってみた。

角度のキレ、スピードは自画自賛したいほど、良く、相手は案の定空振った。

このままの勢いで…と思った矢先…

えっ?力入りすぎた?もちろん豪速球になったけども、外した。

私は動揺したつもりはないけど、ボールが乱れ始めている。

『何…?この感覚…』今まで感じたことない感覚に震えた。

甲子園という舞台は予選からこんなにもメンタルに負荷がかかるの?

私は数球でこうなるのに…乃木くんは平気な顔して良く投げていたわね。もしかして私の方がメンタル弱いのかもしれない。

私は少し投げることへの抵抗が生まれた。

初めて投げることがこんなにも怖いと感じた。

でも、投げない訳にはいかない。やっぱり投げれませんって降りる訳にはいかない。

私はボールを見つめて握り直した。

そして、深呼吸した。目を瞑るとお兄ちゃんの言葉と幸哉さんの言葉が私の心に響いた。

『大丈夫!私なら出来る!』自分にそう言い聞かせて、私は大きく振りかぶった。

緩急の鋭いスライダーを投げた。

相手が打てないことを祈って。

タイミングを外したのか、バットに当てるのが精一杯だった相手。

この回、何とかランナーを出したものの、0点で切り抜けた。

少しホッとした。
< 27 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop