同じ空の下~想い描いた2人の夢~
ベンチに戻ると、「大丈夫か?」と声をかけてくれたお兄ちゃん。

「乱投だったな?お前らしくなかった」と春馬先輩に言われてしまった。

「…どしたん?やっぱり緊張した?」と声をかけてくれるキャッチャー。

「…少し怖かったんです。感じたことのない感覚…」と私が言うと。

「やっぱり怖かったの?乃木くんとおんなじこといってんじゃん!」とキャッチャー言いながら笑う。

「やっぱり女には無理だったか?」と主将は笑う。

「…先輩…重圧が負荷だったんじゃないですか?負けられないって強く思い過ぎたんじゃないですか?」と乃木くんが言う。

「…かもしれない。でもここで引けませんよ。甲子園は私の夢でもあるんですから!」と私は言った。

「おう!それでこそ樹だな。踏ん張れよ?さ、そろそろスタンバイしなー。頼んだぜ!」と主将に言われた。

『…頼んだぜ…』

その言葉が1番圧に感じている。でも、その圧を振り払わないと、甲子園のマウンドで投げることなんて出来ない気がする。

私はみんなに背中を推され、バッターボックスに向かった。

右のバッターボックスに立つ。

『ピッチャーだから』とか『女だから』っ手を抜かれたら私もたまったもんじゃない。

私は構えた。

相手が初球に選んだのは…カーブだ。

私は思い切り降った。カキーンと良い音を鳴らしながら飛んでいく。

『頼むフライにはならないでくれ…』と願いながら。

私は全力で走った。ツーベースヒットになった。

そして、迎えるのは1番のハマタツ。

ハマタツは完全にピッチャーを封じる特大のタイムリーヒットを放った。

おかげで私がホームインし、一点を返し、まだ得点圏にランナーを残し、ノーアウトでチャンスを繋ぐ。

相手のピッチャーがへばり始めたのか、うちは波に乗り始めた。

2番の選手は三振に打ち取られたものの、その後の選手がヒットで続き、この回、気づけば逆転に成功し、点を量産した。

一気に5対2と突き放した。

そして、迎える、七回表。

私の体は調子を取り戻しつつあり、140㎞のストレートが投げられるようになっていた。

昔、化け物と言われた私。後半になるに連れてスピード、威力が上がると言われてきた私。

完全に好調だった。

援護点を貰ったからなのかもしれないけど落ち着いて投げることが出来た。

カーブ、フォーク、ナックル、スライダー、チェンジアップなど。

実に色々な球種を使い分け、相手バッターを翻弄した。

そして、点数を入れさせずにきっちり0点に抑えた。
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