同じ空の下~想い描いた2人の夢~
「もしかして、乃木くんのことかな?」とお兄ちゃんは言う。

私は頷いた。

お兄ちゃんってホントにこういう時の物わかり、スゴくいいのよね。

「じゃあ、直接本人にぶつけちゃえば?俺、一緒に居てやるからさ?」とお兄ちゃんは言う。

これはお兄ちゃんの優しさなんだってわかってるよ。

けど、それってお兄ちゃんも興味のある話ってことよね?

「興味?あるに決まってんじゃん!あんな優秀なピッチャー、ほっとかないだろ」とお兄ちゃんは笑う。

なので、私は乃木くんに電話してみた。

すぐに電話に出てくれた乃木くんは、今から向かうというので、私たちは近くのカフェで待つことにした。

お兄ちゃんと2人で向かい合って座りながら、コーヒーを飲みながら、乃木くんが来るのを待った。

10分ぐらいして、「遅くなってすいません」と乃木くんは現れた。

お兄ちゃんが、「…走ってきた?」と乃木くんに聞くと、「はい、トレーニングがてら走ってきました」と乃木くんは言った。

「なんか飲む?」とお兄ちゃん、

「とりあえず、先座ってよ?」と私は言ってお兄ちゃんの横に座らせた。

「「お兄ちゃんの奢りだから、好きなの頼んでいいよー?」と私が言うと、

「…ホントにいいんですか?」と遠慮気味に言う乃木くんは可愛い。

「…で、何飲むよ?」とお兄ちゃんは急かす。

数秒メニューを見ただけの乃木くんは即決したらしい。

そして、アイスカフェオレを頼んでいた。

かなり甘党のようで、運ばれてきたカフェオレに角砂糖を2つも入れていた。

「…聞きたいことってもしかして左投げから右投げに変わった理由ですか?」と乃木くんは言ってきた。

私は頷いた。

「…何となくそうだと思ってました」と笑顔で言う乃木くん。

乃木くんは「何から話そうかな?」と少し悩んだようだったが、少しして、話してくれた。

それはあまりにも残酷だった。

練習でしたケガではなく、家族で試合を見に行った日に信号無視して突っ込んできた車と事故を起こした、交通事故のケガだった。

その時、弟を守るためにとっさに弟に覆い被さる形で守ったのが致命傷となり、大怪我したとのことだった。

両親は、骨折といった重症をおった。

弟は乃木くんに守られて、軽症ですんだとのこと。

その後の記憶はないらしいが、気づいたら病院のベットの上で意識が朦朧とし、生死を彷徨ったらしい。

その時、遠くから弟の『やだぁー。兄ちゃん、置いてっちゃやだー』と叫ぶ声に引き戻されるようにして、意識を戻したとのこと。

目を覚ましてから精密検査を受けたら左半身の粉砕骨折していたらしく、しばらく声も出ず苦しんでいたって話してくれた。

それが小5の時の話だって。

私はそれを聞いて涙がこぼれた。

自分を犠牲にしてでも弟を守ったヒーローとそんなヒーローをこっちの世界に引き戻した弟…

美しすぎる兄弟愛に感動もしていた。

けど。それ以上に乃木くんの苦しみや、辛さがどれほど強いものだったのかを改めて感じた。

そう思ったら私は平穏に生きてきたんだと改めて思う。

声が出るようになると、野球の話ばかりしていた乃木くんにお母さんが監督にお見舞いに来てくれるように頼んだらしい。

その時、監督と約束したのが、野球を続けることだったらしく、それを転機に右ピッチャーへと転身したらしい。

苦しすぎるリハビリに耐え、何とか左でも投げられるくらいには戻したが、両方で投げられるのを武器にしようと監督と医師と話して、特別メニューを組み、練習を始めたらしい。

その時の出来事が、乃木くんの憑依型、コントロールタイプになったらしい。

ここまで話を聞き追えた私は、今の乃木くんがどれだけスゴくて、努力してきたを感じた。

だからこそ、誰よりも野球への情熱が強いことも感じた。

私は「ありがとう。ここまで話してくれて」と涙ながらに言うと、

「なんで泣くんですかぁ?」と笑って私を励まそうとしてくれる乃木くん

ほんとの意味で乃木くんは強いなって思った。そして、そんな乃木くんに負けてられない!って改めて思った。

自分の人生に恥じない生き方をしようって。
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