同じ空の下~想い描いた2人の夢~
深呼吸をしながら、乃木くんは目を閉じて胸に手を当てる。

そして、ボールを握って目線を上げた。

乃木くんの初球はストレートの内角低めだ。

けど、さすがに相手も合わしてくる。ファールになったが、きっちりバットに当ててきた。

けど、乃木くんは顔色変えるどころか口角を上げて笑っていた。

それから、ツーシームやナックル、カーブ

スライダーなどいい感じに投げわけ、相手を翻弄していた。

そしてこの回、乃木くんは一点も与えなかった。

うちらの攻撃も塁に出たりとチャンスはあったものの、得点打になるものはなく、点は入らなかった。

そして、七回を迎える。

乃木くんは私のところに来ると、

「グローブ貸して貰えませんか?」と言ってきた。

えっ?このタイミングで?!と思ったが、どうやら本気らしく、

左投げに変えるらしい。

私は頷いた。そしてグローブを渡した。

「暴れてきます!見ててくださいね?先輩…」と乃木くんは笑うと、マウンドに走って向かった。

皆が驚いている。

そりゃそうよね、いきなり右で投げてたピッチャーがサウスポーに変わってるんだから。

相手選手はさすがに動揺し、乱れていた。

空振りも多く、うまく合わせられないみたい。

さすが乃木くん。

スピードもいい感じに出てるし、カーブやストレート、右で投げるのと変わらないくらいのものはある。

もしかしたら左ピッチャーを憑依させているのかも知れないが。

左で投げても私が見る限り悪くない。

この回、ヒットにさえさせなかった乃木くん。

皆が鉄壁の守備をしたお陰もあったけど。

永遠のライバルとして負け続けてきたここに、勝てるかもしれないチャンスとなり、皆も力入っていた。

私たちの攻撃が始まった。

なんとか出塁もあってチャンスだったんだけど…ダブルプレー取られて終わってしまった。

回は8回を迎えた。

乃木くんは奮闘するも、一点返されてしまった。

でも怯まないのが乃木くん。

その後は、一点も入れさせること無く、終わらせた。

この回のうちの攻撃も得点は入らなかった。

そしていよいよ最終回を迎えた。

ウチがリードしているため、この回、アウトを3つ取れれば攻撃無しで試合は終わる。

皆のボルテージが上がっているのが、ベンチに居ても伝わる。

1球目、スライダーだった。豪快に振ってきた。バットに当ててきた。

その後も、何球も粘られた。

1人目からかなり手こずっている。

けど、乃木くんがついに仕留めにかかったのは、7球目だった。

豪速球のストレートで相手のバットは空を切る。140後半は出ていた。

やっと1つ、アウトを取った。

後2つ…

私と春馬先輩は興奮気味に乃木くんと皆を見守った。

2人目、豪快な音に、飛距離も伸びていき、ホームランとなってしまった。

ソロホームランだったため、一点で済んだが大きな当たりだった。

点差も7対5になってしまった。

けど、誰も諦めない。皆前を向いている。

3人目、センターフライに打ち取り、ついにアウト後1つになった。

私と春馬先輩の手は自然と重なる。

そして向かい合って微笑みあったがすぐに目線を戻した。

そして…マウンドを見つめる。

4人目、打たれてしまった。

こんな時ってこういうこと、続くよね…

けど、気持ちが焦ってるのは私だけ?

乃木くんや、皆は平然としていた。

5人目、遂に、この時を迎える。

相手のピッチャーをファールやストライクで追い込み、ラストは決め球の豪速球ストレート。

豪快に振り損じてくれたお陰でスリーアウト…

長かった試合は終わった。

そして…県大会初優勝で、甲子園への切符を掴んだ。

私と春馬先輩はベンチで抱き合って喜んだ。

マネージャーや先生も嬉しそうに笑っていた。

皆が戻ってきて、さらに私たちは皆で抱き合って喜んだ。

初優勝に、初甲子園!皆も先生も大喜びだった。

相手チームは放心状態だった。

挨拶をして、会場を後にした。

帰りのバスの中では皆嬉しすぎて大騒ぎだった。

主将は嬉しそうに、

「やったな!お前ら。これでまだ野球出来るな!」と言って皆もそれに乗っかった。
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