王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「ここから馬車で二時間分ほど川に沿って北に向かえば、ケントリア領に入る。そこに王家の別荘があるのだ。カイラも一度行ったことがあるはずだ」
チラリとカイラに視線を送る。
カイラは懐かしそうに目を細めた。
「ええ。イートン伯爵領から戻ったときですね」
あのときはマデリンからの妨害を危惧して遠回りして帰ってきたのだが、その休憩で使った別荘だ。
王が迎えに来てくれるとは予想もしていなかったので、カイラは動揺しつつも感激した。
そのとき初対面だったザックはきっともっと驚いただろう。
カイラはあの時の息子の狼狽ぶりを思い出して、クスリと笑った。
「私はこれから、そこに向かうつもりだった。今後何かがあって、私がカイラと離れた場合、カイラを連れてそこまで向かってほしい」
「離れるって……どうしてですか?」
ガタン、と大きく馬車が揺れた。
「……っ、どうした」
「襲撃です。陛下」
護衛が大声を上げた。
ナサニエルは咄嗟にカイラを抱き込み、ロザリーを馬車の端に押し込んだ。
脇に差した剣を抜き、二人を守るように構える。
「そんな……やはり罠だったのですか。私はあなたまで巻き添えに……」
青ざめて震えるカイラをギュッと抱きしめ、ナサニエルは落ち着かせるように冷静な声音で言う。
「そなたは騙されたのだ。悪いのは騙された方ではなく騙したほうだろう?」