王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「ですが。侯爵様が私を邪魔に思うのは仕方ありません。ですがあなたはこの国の王です」
「……傀儡の王だ。中途半端な反抗しかできない……な。世が望むのはもっといい王だろう。ロザリンド嬢、カイラを頼むぞ」
ナサニエルはそう言うと、馬車の戸を開けた。外ではいつの間にこんなにというように盗賊らしき身なりの集団に囲まれていた。
「……数が多いな」
「陛下、中にいてください!」
ふたりの護衛が悲鳴のような声を上げる。
だが、馬車の御者をしている男はアンスバッハ侯爵の手のものだ。ゆさぶりをかけ、ナサニエルを振り落とそうとする。
ナサニエルはカイラをロザリーに預けると、「頼んだぞ」と言って、扉から御者席へと飛び乗った。
護衛は外を囲う追っ手を蹴散らすので精いっぱいである。
「ひっ」
御者は突然現れたナサニエルに驚き、飛び降りようとしたところを押さえられた。
「動くな」
「ひっ」
長剣を首に当てられ、すくみ上る。
「私を殺せと言われてきたのか? それともカイラか?」
「そんな滅相もない……」
「少なくとも、騙したのは事実だろう? どこにアイザックがいる?」
ナサニエルは容赦なく剣をするりと動かす。鎖骨に沿って刃を動かす。御者の服がはらりと切れた。
「ひいっ。あ、アイザック様は本当は見つかっていません」
「ではやはり騙したということだな」
周囲では護衛と盗賊まがいの剣の打ち合う音がする。