王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました

「簡単に騙されて、陛下にまで危険な目に合わせるなんて」

「でも、着いて来ると言ったのは陛下ですよ。本当に危険ならば、おそらく行くなと止めたはずです」

一緒に来たことにも、何らかの意味があるように思えるのだ、と言うとカイラはそうかしら、と苦笑する。

「そうですよ。陛下に止められたら、カイラ様は無理を押してまでは来ないでしょう? それも分かっていらっしゃると思うんです。今回は、一緒に来ることに意味があったんじゃないかと。ただ、陛下はお考えを言葉にはしてくださらないので、推測でしかありませんけど」

だけどそれは、多くの人を巻き込まないようにと考えた彼の判断だろう。
知っていれば、なにかがあったときに裁かれる。
ナサニエル王が多くをひとりで抱えようとするのは、出来るだけ多くの人間を守ろうとしているからだ。

「その陛下が、カイラ様に傍にいて欲しいと望んだのは、よっぽどのことだと思うんですよ」

「そうかしら」

「そうです。だから笑っていましょうよ、カイラ様。役に立つとか立たないとかじゃなくて、陛下はカイラ様がいないと困るんだと思います。ただそれだけですよ」

「では頑張らなければならないわね……?」

腑に落ちないような表情で、それでもカイラは前を向いた。
折れた木や滑る草。いろいろな障害に苦労しながらも、ふたりは川の流れが見えるところまで降りてきた。

< 139 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop