王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「伯父上、王になるのならば、婚儀を早めるのはどうだろう」
「クロエ殿とですか?」
「もちろん」
侯爵は顎に手を当てる。
クロエをコンラッドの婚約者にしたのは、まだまだ子供気分の抜けないコンラッドをうまく動かすためだった。
コンラッドが王位を継承する気になったのなら、必要ないと言えばない。
クロエに関しては、完全にこちら側に入る気があるのか、まだ疑わしいところが多い。
念のため見張りをつけているが、彼女はかなり精力的に人脈を広げている。
陛下にさえ、物おじせずに面会を申し入れていたという報告を聞き、アンスバッハ侯爵はたかが伯爵令嬢という考えを改めた。
(あの娘を、こちらの情報が筒抜けになる立場に置いておいて、本当に大丈夫だろうか)
もちろん、彼女を押さえておけば、イートン伯爵の動きはある程度抑えられるだろう。
だが、それ以上の危険があの娘からもたらされる気がしてならない。
(危険であれば排除したほうがいい。だが、それでコンラッドが暴走するようでも困る。結婚すれば、ある程度抑えられるか。子ができればなおいい)
さすがに自分の子ができれば、こちらに迎合してくるだろう。今は親が大事で、仕方なくこちら側についているのだろうが、子ができれば我が子が一番可愛いはずだ。