王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました


ナサニエル王が、カイラ妃を伴ったお忍びで行方をくらましたという情報が、国中に広まった。
王が消えてからすでに半月。
政務の大半をアンスバッハ侯爵が引き受け、現在唯一残った王族であるコンラッド第三王子と連携を取っている。
この状況を受け、議会の中立派は完全にアンスバッハ侯爵一派に肩入れしている。すでに侯爵の独走状態である。

「早々に王位継承の儀をしなければなりませんな」

伯父のつぶやきに、コンラッドは顔を上げた。

「だが私はまだ学生だぞ? いいのか」

「ナサニエル陛下も、即位されたときは学生でした。私が補佐しながら、学術院の講義と政務を両立させておられたのです。それに比べれば、コンラッド様はもうじき卒業です。全く問題ないでしょう」

「それにしても、伯父上にかしこまれるのは落ち着かないものだな」

その割に笑顔を浮かべながら、コンラッドが頭を掻く。
伯父が公の場面で敬語を使ってくることに、コンラッドは気を良くしていた。

(……我が甥ながら単純なものだ。兄弟でも違うものだな。バイロンはもっと疑り深かったが)

アンスバッハ侯爵は笑顔を浮かべたまま、内心ではコンラッドにため息をつく。

バイロン第一王子、アイザック第二王子、そしてナサニエル国王陛下。
次々を王族が死亡もしくは行方不明になっている現状に疑問を抱くものも少なくない。
多くを問われる前に、まずはコンラッドを王に立て、情勢を安定させなければならない。

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