王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました


「……でも、意外でした。クロエさんが一緒にカイラ様の侍女をしてくださるなんて」

以前クロエは、カイラが怯えるから、彼女のところにご機嫌伺いには行きたくないと言っていたことがある。実際、カイラは上流階級の女性に対して常に引け目のようなものを持っていて、クロエの前では委縮しているようだった。
自らの意思をしっかり持っているクロエが、あのようにオドオドとされればいら立つのも分からないでもない。

「別にあなたのためじゃないわ。最近、退屈だっただけよ。それに、家にいるよりも城にいたほうがお兄様も構ってくれそうだもの。それに……」

「それに?」

「なにもしないで家にいると、縁談を持ち込まれそうなんですもの」

たしかに、クロエとケネスの母親は、常にふたりの子供の結婚相手を探している。家柄的には何の問題もないのに、ふたりがその気にならないばかりに話が進展しないとおかんむりなのだそうだ。

「……クロエさんは結婚するのはお嫌ですか?」

「そうね。夫に尽くすってことがそもそも冗談じゃないわって思うし。……結婚すれば私、お兄様の妹じゃなくなってしまうでしょう?」

目を伏せ、ため息をつくクロエは憂いを帯びていて綺麗だ。
今が花の盛りという年齢の令嬢が、こうもブラコンをこじらせているのは、母親じゃなくとももったいないと思うだろう。
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