王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「ロザリーさん、クロエさん、こっちにいらっしゃい」
部屋に戻るとすぐに、カイラに呼ばれる。
「お呼びですか?」
「ああ、そんなにかしこまらないでちょうだい。ちょっと相談に乗ってほしいのよ」
カイラは少し困ったようにほほ笑み、椅子を勧めた。
カイラとクロエの相性があまりよくないというのは本当のようで、彼女はクロエに対しては遠慮したような態度を取る。
「実は陛下から衣装を作るように言われて、今日仕立て屋さんが来るの。なるべく豪華にするように言われたのだけど、ひとりだと決めかねてしまうから。あと、あなたたちのドレスも一着ずつ注文したいの」
「え……でも、わたしたちにもですか?」
「私の侍女の面倒を見るのは私の務めよ。陛下の許可もいただいているから、気にしないで」
ロザリーとクロエは顔を見合わせた。そして、こっそりとほほ笑みあう。
ライザによると、ナサニエル陛下はカイラへの寵を周囲にアピールしたいのだそうだ。
そうなれば、無実の証明ができなくとも、カイラの子であるアイザックに対しての対応は甘くなる。
議会政治が浸透していても、この国が王国を名乗っている以上、王の影響力は大きいのだ。