王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
「では、伯父上。私にイートン伯爵令嬢をください」
「馬鹿な。イートン伯爵は、アイザック王子の後ろ盾だぞ? いわば敵方の娘だ。お前にふさわしい相手ではない」
アンスバッハ侯爵は、この機会にアイザックに無実の罪を着せ、それを擁護していたイートン伯爵を没落させるつもりでいたのだ。
その娘を王子妃に迎えるなど、冗談じゃない。
「ですが私は、クロエ殿が良いのです」
「よく考えるんだ。他にもふさわしい令嬢はいる。このままアイザック王子が犯人となり、死刑となれば、彼を支援していたイートン伯爵は死に体だ。ふさわしい家柄とは言い難い」
「兄上が犯人じゃなきゃいいのでしょう? その上で、兄上が王位継承権を放棄すればいい」
さも簡単そうに言うコンラッドが信じられない。どうしてあのアイザックが継承権を放棄すると思うのか。
アンスバッハ侯爵は唇を噛みしめた。
「生かしておけば、いつか寝首を掻かれる。それくらいのことが、お前には分からないのか?」
「兄上にそんな力があるとは思えません。あちらだって命あっての物種でしょう」
「馬鹿な……」
アンスバッハ侯爵は、異物を見るような目でコンラッドを見た。だが、コンラッドは本気のようだ。
「どうせ、バイロン兄上は長くはなかったでしょう。アイザック兄上には、バイロン兄上を狙う理由などなかった。ですから、あれは事故だということにすればいいのです。アイザック兄上は、毒と知らずにバイロン兄上に毒を渡してしまった。故意ではないのだから、命まで取る必要はないでしょう。継承権の放棄という形で落ち着けるのです。そうすれば、イートン伯爵だって掲げる旗頭を失う。路頭に迷っているところに、伯父上が救いの手を伸ばすのです。クロエ嬢を俺の妻にすることで、お家を支えることができると」