王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
*
「おかえりなさいませ、旦那様」
アンスバッハ侯爵が屋敷に戻ると、いつものように隙のない格好で執事のグランウィルが出迎える。すでに夜は遅く、妻はすでに床についているのか、やって来る気配さえない。
「ああ」
短く答えたアンスバッハ侯爵は寝室ではなく執務室へと向かう。
それもいつものことなので、暖炉には火が入れられていた。
グランウィルは、彼が好むワインを持っていった。
「今日、アイザック王子……いや、もう王子ではないな。アイザックがグリゼリンに向かう途中、山賊に襲われたという一報が入った。捜索隊には、出来るだけ私の手のものを入れておいた」
侯爵の口端がいやらしく曲がる。グランウィルは主人が私兵を山賊に見せかけるための準備をしていたのを思い出し、それでは、王子が見つかることはないだろうと無言で頷く。
「さあ、いよいよ、残るは王だけだな。こんなに遠回りをするとは思わなかった。ナサニエルが私に反抗するようになり、バイロンが成長するのを待った。しかし奴も私の手を取ろうとしなかった」
侯爵は、深いため息をついて目を伏せる。
やがて傀儡の王とするために、侯爵はバイロンに『お前は何もしなくていい』と言い続け、ただ従順であることを求めた。
が、学術院を卒業し政務に加わるようになると、バイロンは少しずつ侯爵に意見するようになってきた。
まるでかつてのナサニエルのように。
「おかえりなさいませ、旦那様」
アンスバッハ侯爵が屋敷に戻ると、いつものように隙のない格好で執事のグランウィルが出迎える。すでに夜は遅く、妻はすでに床についているのか、やって来る気配さえない。
「ああ」
短く答えたアンスバッハ侯爵は寝室ではなく執務室へと向かう。
それもいつものことなので、暖炉には火が入れられていた。
グランウィルは、彼が好むワインを持っていった。
「今日、アイザック王子……いや、もう王子ではないな。アイザックがグリゼリンに向かう途中、山賊に襲われたという一報が入った。捜索隊には、出来るだけ私の手のものを入れておいた」
侯爵の口端がいやらしく曲がる。グランウィルは主人が私兵を山賊に見せかけるための準備をしていたのを思い出し、それでは、王子が見つかることはないだろうと無言で頷く。
「さあ、いよいよ、残るは王だけだな。こんなに遠回りをするとは思わなかった。ナサニエルが私に反抗するようになり、バイロンが成長するのを待った。しかし奴も私の手を取ろうとしなかった」
侯爵は、深いため息をついて目を伏せる。
やがて傀儡の王とするために、侯爵はバイロンに『お前は何もしなくていい』と言い続け、ただ従順であることを求めた。
が、学術院を卒業し政務に加わるようになると、バイロンは少しずつ侯爵に意見するようになってきた。
まるでかつてのナサニエルのように。