恋を知らない花~初恋~
「恋?私、真中さんに恋してるの?まさか…」

今までの真中さんへの行動や気持ちを思い返せばその言葉は意外にもしっくりきた。

「おめでとう、初恋。なんでアイツなのかは不思議だけど。」

そう言って拓也は私を腕の中に抱きしめ直すとなぜか笑っていた。

「もうっ、からかったの?」

「いや、結衣がこんなに可愛いとはな。もったいないことしたよ。手遅れかもしれないけどちゃんと向き合って来いよ?振られるなり、上手くいくなり、スッキリしとかないと前に進めないぞ。」

「前に…進めるかな?拓也は前に進めそう?」

「おかげさまで、俺は結構前向きになってるよ。」

そう言って拓也は私の頭の上に軽くキスをする。
上手く自分の感情を処理するのはすぐには難しいけど、本当にこれが恋なのなら私は少し人間らしくなれてるのかな?

それから気づけば抱き合ったまま二人とも眠ってしまっていた。
朝は目覚めると簡単に身なりを整えて一緒に部屋を出た。
部屋を出る前拓也は私を抱き寄せ「今までありがとう。」って軽く唇にキスをした。
私も抱きしめ返してお礼を言った。

ホテルの前で拓也はいつものようにタクシーの運転手にお金を渡し、「お願いします。」と言った。
私は一人で乗り込み拓也を見上げる。

「拓也の幸せを願ってる。」

「あぁ、結衣もなっ。しばらくジムには通わせてもらうよ。会ったら挨拶ぐらいしてくれよ。」

って冗談っぽく笑ってドアを閉めた。
軽く手を振るとタクシーは走り出した。
最後は笑顔でお別れできたけど、やはり一人になると涙が溢れた。
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