月影に燦めく
心地良い そよ風に吹かれながら くすくすと笑われる姫君を
「どうかなさいましたか?」
「いいえ、何も。」
そうは言いながらも 相変わらず笑みをたたえておられる。
「鳥はいいわね、自由にあの大空を羽ばたくの。嫉妬しちゃうわ。」
姫君は空に向かって手を伸ばし、そう呟かれた。
姫君の言葉を知ってか知らずか、小枝に止まっていた鳥はその両の翼を震わせ飛び立った。
姫君の言葉に私は是も非もしない。
「そろそろお戻りになられませんか?
きっと皆が心配しておりますよ。」
いつも一緒の侍従は何処へ行ってしまったのだろうか。
あたりに人の気配はない。
「いいのよ、気にしなくて。誰も私のことなんて心配していないわ。
仕事だから 私の傍にいるだけよ。」
"そんなことありませんよ" なんて言葉が口から飛び出す。
本当のことなど何も知らないのに。
「そうだったらいいのだけれど。」
姫君は身体を起こして私の顔をひたと見つめて
「私、貴方の奥方になりたいわ。」
などとのたまう。