ボードウォークの恋人たち
今日の和装下着のままワンピースかぁ、どうしようなどという心配は全くいらなかった。
ワンピースと共に置いてあった紙袋の中にはご丁寧に下着一式とストッキングが入っていた。

それでこれを準備した人間が誰かが完全にわかったんだけれども。

ーーーーーお母さん、ブラジャーだけでなくなぜあなたはこんなひらひらフリフリの娘の勝負ショーツまでここに準備したの。

いらんだろ、今これ。常識的に考えて。

振袖だってパンツくらいはきちんと穿いている。ラインが出ないシームレスショーツを。
それ、今朝の着付けの時にお母さんだって見ていたはず。

母に対して微妙に殺意を抱きながらも着替えは無事終了。

「終わりました」

廊下にいるハルに声をかけると、私に近付いてきて黙って頭に手を伸ばしてきた。

ハルの手で和装に合うようにアップにしていた私の髪からヘアピンが外されていく。
かんざしとピンがぽとぽととベッドに落とされ全てが外れると最後に髪をくしゃくしゃっとされた。

「何すんのよ」
「こんなん水音に似合わないだろ」

失礼だな。
当たってるけど。

おしゃれなヘアスタイルに戻すことは早々に諦め持っていたヘアゴムでくしゃくしゃになった髪をくるくるっとまとめて留めておいた。
何もしないよりは幾分ましだろう。あのままの爆発頭じゃ外には出られないし。
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