ボードウォークの恋人たち
そうして、私は両手を腰に当ててハルの目の前で仁王立ちした。
お腹の底から声を出しハルを睨みつける。

「で」
「で?」
ハルがニコリと笑った。

「一体今までどこに行ってたのよ」
「んー、アメリカ」
はあ?

ハルの呑気な声に腹が立ってくる。
連絡もなく6年。
6年だよ、6年。
新生児ならもうすぐ小学校入学。
ピカピカの1年生ならもう中学生。
中学生なら大学生になるような年月なんだよ、6年って。

「水音だって何してるんだよ。俺がいるのに見合いってどういうことか説明しろ」

俺がいるのに?俺が?おれが?オレガ?

「今もしかして”俺がいるのに”とか言った?」

「ああ」ハルが頷く。

「いるのに?いるのにって何?いなかったよね?ずうーーーーーといなかったよね?しかもどこに行ったのかいつ帰ってくるのかとか何にも知らなかったよね?6年だよ、6年。いきなりいなくなって6年。6年、6年、6年!高校生だった私も立派な社会人になってますけど」

怒りが爆発してふざけんなと叫んだところでハルが急に私に覆いかぶさってきた。

「ごめん、水音」ウィスパーボイスと共に落ちてきたのはまたもや唇。
ベッドに押し倒されて、ハルの美しいお顔に付属している細めの唇が私の唇に合わさった。

感じるのは温かくて柔らかい感触。ハルの匂い。

んん、なんて気持ちいい・・・じゃなかった。
流されそうになった。
ダメでしょ、これ完全にアウト。

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