完璧御曹司の優しい結婚事情
「川村さん」

2人が話しているのを聞いていたら、突然課長が私に声をかけてきた。

「雨は止んでる。歩くのは大丈夫?」

「は、はい。大丈夫です」

課長は頷くと、運転手さんにここで降りることを告げて、支払いをすませた。タクシーを降りると、一気に不快な温かい空気がまとわりついてくる。

「ここからだと、僕のマンションの方が近い。たぶん、30分もかからないと思う。川村さんさえ嫌じゃなかったら、今夜は僕のマンションに来る?誓って変なことはしない」


課長のマンションに……


「今夜は僕も飲んでしまったから、明日になったら車で送るよ」

えっと……
なんて言えばいいのか……

困惑して課長を見ると、ただ本当に私を心配してくれているのが伝わってきた。
この辺りに、すぐ泊まれるようなホテルは見当たらない。それに、30分ぐらいならともかく、1時間近く歩く自信は、正直ない。

それでも戸惑っている私に、課長は優しく微笑んだ。

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