完璧御曹司の優しい結婚事情
午前中いっぱい、資料作りに追われていた。樹さんとは、作成した資料を確認してもらうぐらいのやりとりしか関わりがなかったものの、対面すると仕事用とは違う、プライベートな笑みをこっそり向けられて、勤務中にもかかわらず、ドキドキし通しだ。私、本当に樹さんとお付き合いしているんだと思うと、疲れも吹き飛び、やる気が満ちてくる。
けれど、同時に困ったことが一つ。気をつけてはいたけれど、気付くと樹さんのことを目で追ってしまっていた。

「葉月ちゃん、ランチに行くわよ」

佐藤さんに誘われて、慌てて席を立つ。

「今日は社食じゃなくて、外に行きましょう」

こんな誘いは珍しい。誰かの誕生日や、何か小さなお祝いごとがあった時ぐらいしか外に出ることはない。

「今日、何かありましたっけ?」

「ううん。そうじゃないの。会社の人に聞かれたくないかなあと思って」

「何をですか?」

佐藤さんが私の肩をガシッと掴んで、ニヤリと笑う。私の耳元に顔を近付けると、小声で囁いた。

「葉月ちゃんの恋バナ」

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