Sweetな彼、Bitterな彼女
チリ、と胸の奥が焦げるような感触がして、燻る火種を急いで打ち消し、余計なことを想像しかけた自分を戒めた。
(出入りしているのは、彼女だけじゃないだろうし……。気を遣ってくれているだけ)
嫉妬に囚われた目で見れば、すべてが怪しく思えてしまう。
「紅さんはどうぞ座っててくださいね? わたしがやりますから」
蒼はわたしを抱えたままソファーに座り、ミカがテーブルの上を手早く片づける。
彼女以外のメンバーは、はなから手伝う気はないらしく、興味津々の様子を隠そうともせず、わたしを質問攻めにした。
「あの、紅さんに訊きたいことがあるんですけど……」
「蒼とは、どこで知り合ったんですか?」
「どこって……社員食堂だけど?」
「社員食堂? 蒼、そんなところでナンパしたの?」
「相変わらず、本能で生きてるわね……」
「紅さんって、何の仕事してるんですか?」
「財務経理」
「ぜんっぜん、蒼と共通点なさそう……」
「あ、じゃあ、大学が芸大系なんですね? 蒼と付き合うなら、当然そっちに興味ありますよね?」
「ごめんなさい。大学は、経済学部なの。芸術関係のことは疎くて……」
「ええっ!? じゃあ、いつもどんな話してるんですか? 蒼ってば、デザインの話ばっかりしません?」
「そんなことはないけど……」
「紅さんが、蒼に合わせてるんでしょ? 大人だし」
勝手に納得してくれているのを否定するのも面倒だ。
曖昧な笑みを浮かべながら、注がれたワインを飲んでいると、切り分けたケーキを運んで来たミカが、訳知り顔で言う。
「そうよ。紅さんじゃなきゃ、続かない。蒼が約束をドタキャンしても、怒られているところ見たことがないもの。紅さん、蒼に厳しく言った方がいいですよ? 昔から、友だち付き合いを優先して、彼女を放置する癖があるんです」
蒼に思わせぶりな目配せをするミカに、一瞬「マウンティングされてる?」と思ったが、たとえそうだったとしても、冷静に大人の対応を貫くのが正しい対処法だ。
「付き合いも仕事の内だから」
「大人の余裕ですね。わたしには、無理」
「うん、わたしも。女友だちを部屋に出入りさせているだけでも、イヤかも」
「そう思うんなら、遠慮すれば?」
むっとした蒼の言葉に、「女友だち」である彼女たちは顔を見合わせ、爆笑した。
「いまさらでしょ。だって、蒼となんて、あり得ないもん」
「蒼の変人ぶりを知ってたら、無理。ナイナイ」
「紅さん、知ってます? 蒼ってば、昔……」
「おまえら、いい加減にしろよ! だから、会わせたくなかったんだよ!」
蒼には、暴露されたくない過去があるらしい。強制的に質問タイムを終わらせた。
その後、彼らは大学時代の話や芸術談議で盛り上がり、わたしは愛想笑いと曖昧な返事でひたすら時が過ぎるのを待つことに……。
時計の針が午前一時を回る頃、ようやく彼らは帰って行った。