冷酷姫に溺れて。
それだから、勝手に霜月さんに親近感がある。

彼女もまた、一人で学校生活の大半を過ごしている。

前々から気にしてはいたけど、それほどではなかった。

みんなと同じ、『冷酷姫』のイメージしかなかった。


だけど、あの日。

彼女は人一倍優しいことを知った。


今日みたいに雪がしんしんと降る日だった。

俺は部活で遅くなって、一人で帰っていた。

さすがに遅すぎたな。

母さんに絶対怒られる。


その時、迷子らしき少女を見つけた。

声をかけに行こうとすると、見たことがある人がその子に話しかけた。

「どうしたの?」

霜月さんだった。

彼女はわざわざ、少女と目線を合わせるために膝を折って話しかけていた。

「お母さんとはぐれちゃったの…」

「それなら、お姉さんと一緒に探そ」

「うん!」

夜も遅いのに一緒に探そうとする霜月さんに感動した。

普段の『冷酷姫』のイメージと全然違う。

「あの、俺も手伝います!」

「あなたは……?」

「俺、入井千影(いりいちかげ)といいます。同じクラスの霜月さんですよね」

「ああ、入井くんか。ありがとう」

その時、微笑んでくれた顔が最高に可愛くて。
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