"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる

「最初は町田君いいなって思ってたからいなくなっちゃった時は残念だなって思ったけど。まさか、少女漫画みたいな展開が裏にあると思わなかったなぁ」

「実っていればいいけどね」

「千葉崎くんって友達思いなんだね」

「そうかな?」

少なくとも「実っていればいい」という言葉は少しトゲを含んでいたけれど、それでも友達思いと言えるのか。

スマホ画面を見るがメッセージは未だに来ていない。

告白がどうなったのか栄太にも予測がつかず、さっきから妙にソワソワしていた。


「私、友達思いな人好き」

「あはは、どうも〜」

駅につき、改札を通ろうとする栄太のコートを掴む。
栄太は柔和な笑みを浮かべつつ言った。

「悪いけど、俺彼女いるんだよね。友達の恋の応援のために合コンに参加しただけだから」

「知ってるよ?」

「だったら他当たってくんない?俺以外はフリーなんだしさ」

「へー、意外に彼女に一途な感じなんだ」

そこもいいね、と言われて背筋がゾワっとする。
何がいいのか。

「一回くらいいいじゃん。彼女にバレなきゃ浮気じゃないよ?」

ハートマークがついていそうな頭の悪い語尾の音の上げ方に内心では吐きたいくらいに気持ち悪い。

内容も嫌悪感しか湧かなかった。
 
まず、栄太には莉乃がいるので何を言われようが絶対に誘いを受けるつもりはないけれど、もし莉乃という存在がいなくてもお断りだ。

自分にどれだけ自信があるのかは知らないが栄太は目の前の女は全く興味もないし、一回だってありえない。

見た目がどうというよりも、思考が気に食わない。


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