"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
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トーク画面に「305」の文字。
なんて味気ないんだ。もう少しくらい可愛げのある文章を送ってくれたっていいのに。

そんなことを千葉崎栄太は考えながら305の部屋を開けた。

「町田君の代理の千葉崎で〜す!よろしくね!」

「彼女持ちは帰れ!」と、男子勢の誰かが言ったがそこはスルーして勝手に席につく。

この合コンの男子勢は学部もサークルも違うが、悠介の友達ということで顔見知り程度ではあった。

……のは、この前までの話で実は今回の協力者。

何も知らない女性陣は突然入れ替わりで入ってきた彼女持ちの男に困惑を隠し切れていない。

そんな空気を読み取って、栄太はマイク片手に今日の計画を話すのだった。


深夜を越えてお開きとなる頃にはみんな酔いが回っていて、テンションがおかしい。

栄太は酒を飲むふりをしてソフトドリンクばかりを飲んでいたので平常運転だが、彼らを介抱するつもりは全くないのでさっさとおさらばすることにした。

同じ駅を利用するふりをしてひっそりと姿を消し、別の駅へと向かう。

線は違うが乗り継げば帰れないことはない。


「あの、千葉崎くん」

声に振り向けばさっきの合コンにいた女子だった。

「どしたの?」

「私もこっちの線なの」

「………そうなんだ〜」


嘘ではないかもしれないが、栄太の勘はよく当たる。
彼の勘は嘘だと言っていた。
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