"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる

なんだ、ただの惚気じゃん。



三回生になるとゼミが始まった。

一回生で取れるだけの単位を取得しておいたおかげで授業そのものは少ない。それなのに本来ならスカスカのスケジュールがゼミで埋められていく。

「ゴールデンウィーク、二人でどっか行かないの?」

頬杖をつきながら楽しそうにニヤニヤと笑う千葉崎。
ゼミのプレゼンシートを打ちながら「特にない」と返答する。

「なんでさ〜。付き合って初めての大型連休じゃん。三ヶ月って丁度いい時期なんじゃないの?」

何が丁度いいのか、流石の俺でも分かるがソレは絶対にない。

「お前、分かってて言ってるだろ?」

「ぜ〜んぜん?」

胡散臭い笑みを浮かべながら首を振る。
絶対にわかっている。


「旅行じゃなくてもせめて日帰りでどっか行って来たら?」

「一応話は出たんだけどな」


ちょっと遠出してどこか行こうかという話にはなった。けれど、二人でどこへ行けばいいのかがお互いに分からず、話はストップしたままだった。

最終的には酒井に料理を教わるということで落ち着いてしまい、遠出する話は無くなってしまった。


「千葉崎も来る?」

「やだよ。酒井に嫌がられそうだし、付き合いたてのカップルのお邪魔になりたくないし〜」

「こういう時だけ引き下がりやがって」

普段なら絶対に飛び込んでくるのでちょっとばかり期待していたが、千葉崎にも分別というものがあったらしい。


「だってさ〜、家っていちゃいちゃし放題じゃん?しかも、ゆ〜君は一人暮らしなわけだし心置きなく関係を進められるんじゃないの?」

< 180 / 259 >

この作品をシェア

pagetop