"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
「本当に育ててたんだ」
ほぉ、と感心するようにプランターのミニトマトや畑のじゃがいもを見る酒井。
「でもこれ、すごい量が獲れそうじゃない?ミニトマトはまだしも、じゃがいもはきつくない?」
「きついだろつな。全部が全部上手く育つとは限らないけど、その時は一人じゃ消費しきれねーから持って帰って」
「やったー!じゃあ、それまでにじゃがいも料理出来るようにしておくからさ。……作りに来ても良い?」
「楽しみにしとく」
雑草を抜き終わり、水やりをする。
ジョウロは一つしかないので俺が水をやり、酒井には他愛無い話をしながら縁側で待ってもらっていた。
ちょうど水やりが終わった時だ。
隣の家から土を踏み締める音が聞こえて来て、すぐにバサバサと洗濯物を干す音が聞こえて来た。
ドクンと心臓が跳ね、思わず音のした方を見てしまう。視線を感じたのか琴音が振り返った。
「こんにちは!町田くん」
「こんにちは。……ご実家に帰っているのかと思ってました」
前にゴールデンウィーク中に実家に泊まって帰ると言っていて、その日がいつかと聞けば昨日だった。
昨日と今日の二日でそれぞれの実家へ泊まることを考えれば今日はいないと思っていた。
酒井と俺の予定が合ったのは今日と明日で、鉢合わせしないようにしようと今日を選んだのに。