"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
もちろん聞けるはずもなく、「花壇が寂しくなっちゃいましたね」なんて無難な受け答えしかできない。
そんな俺をクスリと笑って、彼女は言った。
「前に出した問題の答え合わせをしよっか。向日葵の花言葉はね、"あなただけを見つめる"って意味なの」
「……そうなんですね」
知っている。けれど、咄嗟に知らないふりをした。
知っていてはいけないと思ったのだ。
向日葵は成長し切っているので花の向きは固定されている。たまたま、今は太陽の方を向いていた。
その向きで固定された向日葵は枯れるまで、この時間は太陽の方を向くんだろう。
意味を知っているのに知らないふりをしている今、しゃべらないひまわりに「嘘つき」と言われている気分だった。
俺は暑いから汗をかくのではなく、ヒヤリとしたから汗をかいていた。
きっと、琴音も気づいているのだろう。
「誰を見つめてるんだと思う?」
だからそんなことを言うのだ。
誰が、とは言われなくともわかる。
誰を、が分からない。
分かりたくなかった。