"さよなら"には早すぎて、"はじめまして"には遅すぎる
この間、平松の話を聞いたタイミングのせいか、花束を渡す相手のことを悪い方に捉えてしまう。
そんなことはありえない。あってはならないのに、何故だか坂を上るあのキャリアウーマンの女性が浮かんでしまう。
花言葉の時のように、間違えたらはぐらかしてくれないだろうか。
琴音は人に嘘をつけるタイプの人間ではない。それ故に、彼女はいつも大事なことをはぐらかして誤魔化しているような気がする。
いつもならそれでモヤモヤしてしまうが、今回ばかりはそうして貰えることを祈った。
「お墓参り、ですかね?……恩師に、とか?」
お盆も近いし、あの黒いスーツから連想されることといえばお墓参りだった。
向日葵というのは珍しい気もするが、夏の花だし、故人が好んでいたものだとしたら十分あり得る話だと思った。
わざと間違えるのではなく、限りなく正解に近い間違いを目指した答えは「半分正解で半分不正解」。
「どうして向日葵を植えるか、聞いたことないって言ってませんでした?」
「直接はね。でも好きな人のことはなんだって知りたいでしょ?」
俺は頷くことができなかった。
少なくとも、俺は今、彼女のことを知りたいとは思っていなかった。